遺言には、主に自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
・自筆証書遺言は、自分で書く遺言書です。
・公正証書遺言は、公証人が文章にしてくれる遺言です。
どちらも、内容は自分で考える必要があります。
自筆証書遺言は、自分で全部書きます
自分で書きますが、遺言には、定められた様式があります。
様式と異なると、その遺言書は無効になりますので、ご注意ください。
自分で全文を書きます。
ただし、財産目録だけはパソコン作成が可能になりました。
作成した日付を明確に記入し、署名と捺印をします。
署名は芸名やペンネームでも、本人と分かれば可能ですが、
紛争の原因になりかねないので、
本名で記載した方が、間違いありません。
遺言書が数枚にわたる場合は契印(割印)をします。
判子は、スタンプの判子以外であれば、どの判子でも構いませんが、
実印で行った方が、間違いがありません。
間違えた場合は訂正します
文章を訂正、追加、削除する場合は、具体的な変更箇所を指示して、
変更した旨を付記し、その上で署名捺印し、変更箇所にも捺印しなければなりません。
ただ、間違いが多い場合は、書き直した方が良いでしょう。
自筆証書遺言で書ける内容とは
どの財産を誰に残すか書くことができます。
遺言がない場合は、法的相続人のみが財産を貰えます。
この法的相続人というのは、家族構成によって異なります。
遺言を書くことで、法定相続人ではない人に、財産を渡すことができます。
また、他にも慈善団体などに寄付することもできます。
あるいは、相続の廃除といって、
法的相続人のある特定の家族に
相続させないようにすることもできます。
例えば、素行が不良な子供に対して、
財産を渡したくない場合などです。
財産以外のことでは、
未婚相手との間の子の認知や
未成年者の相続人の後見人などについても
指定することができます。
自筆証書遺言の書き方
何も参考にせず書くことは難しいと思います。
現在はインターネットで「自筆証書遺言の書き方」と検索すれば、
たくさんのウェブページが表示されることでしょう。
「遺言の書き方」が記載されている本を
購入あるいは図書館で借りてきて、
取り組んでみるのもいいのではないでしょうか。
専門職に手伝ってもらう方法
自分で書いた遺言書に不備があった場合は、残念ながら無効な遺言書になります。
自分でチェックしたつもりでも、自分の文章の間違えに気が付けないことがあります。
そのため、第三者にも確認してもらった方が、安心です。
ただし、家族に確認してもらうと、
遺言書の偽造や遺言書を捨てられるなど
の紛争の原因にもなりかねません。
そのため、専門家に見てもらった方が良いです。
専門家の中では、費用が比較的安く、相談しやすい行政書士に
見てもらうことをお勧めします。
自筆証書遺言書の保管は自分か法務局
自筆証書遺言書は、自分で保管することができます。
金庫や机の引き出しなど、自分の好きなところに置いておくことができます。
ただし、紛失や間違えて処分してしまう可能性があります。
見つけやすい場所に保管した場合は、
こっそりと遺言書を見た家族が、
自分にとって不利な遺言書だと、廃棄してしまう場合もあります。
見つからない場所に保管した場合は、ご自身が亡くなってから、
誰も遺言書を発見できないということもあり得ます。
『自筆証書遺言書保管制度』とは
自筆証書遺言は、保管方法に課題があります。
その課題を解決するため、『自筆証書遺言書保管制度』が令和2年から始まりました。
法務局にある遺言書保管所遺言書を保管することができるようになりました。
遺言者本人の保管手続きについて
手続きには必ず遺言者本人が遺言書保管所へ行く必要があります。
代理人が行うことはできません。
遺言書が、定められた様式に従って作成されているか等の外形的な確認を行い、
その原本及びデータを長期間適正に管理します。
外形的な確認だけなので、
遺言書の内容の確認や有効・無効であるかの判断は行いません。
相続人の遺言書の閲覧や交付について
遺言者が亡くなった後に、預けた遺言書を相続人は閲覧か遺言書の画像情報の交付してもらえます。
相続人のうち、誰かが閲覧や交付請求した場合は、他の相続人にも通知が行きます。
遺言書を作ったことを、生前に相続人に知らせていない場合は、
遺言者が亡くなった後に、遺言書保管所から遺言書があることを
相続人に通知をお願いすることも可能です。
全国どの遺言書保管所でも閲覧や交付請求を行うことができます。
遺言書原本の閲覧は、保管されている遺言書保管所のみです。
また、保管制度で保管された遺言書は、家庭裁判所による検認が不要です。
自宅で保管している自筆遺言の場合は、
開封する前に家庭裁判所に検認を請求する必要があります。
自宅保管は検認が必要です
検認とは、相続人に対し、遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、
遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。
家庭裁判所に提出し、「検認」を請求します。
遺言書を発見して検認の手続きを終えるまで、2~3か月かかります。
「検認」を受けずに開封した場合、5万円以下の過料(罰則)になる場合がありますので、
ご注意ください。
自筆証書遺言は、検認しても有効になる訳ではない
裁判所で「検認」してもらったから、有効な遺言とは限りません。
「検認」は、裁判所が、その遺言の存在を確認して、
その後の遺言書の偽造などを防止する手続きです。
有効であるかどうかの判断までは行いません。
遺言書の内容に不備がある場合や
複数の遺言が存在する場合、誰かが偽造した遺言がある場合などは、
法律的に争いごとになる可能性もあります。
公正証書遺言は、有効な遺言が作れる
公正証書遺言も、「検認」は不要です。
公証人が内容を確認しているので、
遺言内容に不備が発生することは稀です。
また、行政書士などの専門家に遺言原案を作ってもらうことで、
より確実な遺言書を作ることができます。
そのため、公正証書遺言の方が有効な遺言書を作れます。
難点は、費用がかかることですが、争いごとを避けるためには
それほど高い費用ではありません。
自筆証書遺言にするか、公正証書遺言にするかは、
それぞれの事情により判断していけば良いと思います。
先に、自筆証書遺言を書いて、その後、公正証書遺言を作っても構いません。
遺言がまったく無いよりは、自筆証書遺言でもあった方が良いので、
まずは、遺言を書いてみましょう。