いよいよ、自分の人生の最期が近づいてきた。
残された家族のために、遺言を残そう。
と思う場面が来るかもしれません。
でも、それは、ちょっと勘違いが
あるかもしれません。
死ぬ前だから、大切なことを言っておきたい
遺言として、死ぬ間際になったら、
枕元に集まった家族に、
「兄弟仲良く暮らしてくれ」
「今まで、色々とありがとう」
と言葉を残したおこうと思うかもしれません。
元気なうちは言えなかったことや
家族に対して感謝の気持ちを伝えるには
良いことです。
財産のことは、口頭では意味がない
残された財産のことになると、
口頭で言うだけでは、
法的には意味がありません。
「残った家やお金は、家族仲良く分けてくれ」
「財産は全部、誰々に譲る」
と言っても、
残念ながら願望で終わる可能性が高いです。
また、死ぬ間際には、
それほどの話をする体力がなくなっています。
細かいことは言えないと思った方が良いです。
遺言と遺書は似ているが、内容は別物
遺言には、2つの意味があります。
・1つは、先ほどのような「死後のために生前に言い残す言葉」です。
・もう1つは、「死後のために財産の相続を決める遺言」です。
1つめの「死後のために生前に言い残す言葉」は、
特に決まりはないので、口頭でも、文章でも自由に残せます。
どういう内容の言葉を残すのかも自由です。
ただ、繰り返しになりますが法的には何の意味もありません。
そして、「死後のために生前に言い残す言葉」を文章にしたものが遺書です。
一般的な遺言とは
もう1つの、「死後のために財産の相続を決める遺言」が、
現代の一般的な遺言です。
口頭では原則として成立しません。
遺言書として、法的なルールを守った文章にすることで、
法的に有効になります。
不備があるなど
法的なルールが守れていない遺言書の場合は、
法的には無効になるので注意が必要です。
遺言書は、法的に決まっている
遺言書が法的に成立するためには、いくつかの法的なルールがあります。
ここでは代表的なルールをあげます。
・遺言書と書く
・誰に、どの財産を、どのくらい譲るかを正確に書く
・遺言に書いている手続きを誰にしてもらうかを書く
・人が特定できるように、名前だけでなく生年月日、住所を正確に書いておく
・財産を特定できるように、正確に書いておく
・遺言書を書いた年月日を正確に書く
・自分の名前を正確に書く
・判子を押す
・遺言書が複数枚の場合は、割印を行う。
・自宅などで保管の場合は、念のため、封筒に入れて、封緘して判子を押す
人の名前や財産の特定を間違えないように
くれぐれもお気をつけください。
法定なルールを守れた遺言となっているか
遺言の書き方の本で勉強するか
専門家に確認してもらうことをお勧めします。
遺言は基本的に財産のことを決める
遺言書に、自分が死んだ後の家族の生活を書いておきたいかもしれません。
例えば、子どもには、「仕事に励んで、くじけないこと」
配偶者には、「健康に気をつけて、穏やかに暮らすこと」
など、自分なりに思いやりを持った言葉を残しておくこともあるでしょう。
ただし、残念ながら遺言書に書いても、そういったことは
法的には何の効力もありません。
遺言書は、基本的には財産のことを決めるものと思って下さい。
他にも、祭祀承継者の指名や子供の認知なども決められますが、
これらも基本的には財産を誰に譲るのかを決めるためのものです。
家族へのメッセージなら、遺言ではなく、遺書に
家族に残したい言葉があれば、
遺言書ではなく、遺書として書いておくと良いです。
遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言であれば、遺言書と遺書の両方を兼ねて書くことができます。
ただし、ほぼ自筆で書くので大変です。
公正証書遺言であれば、書かなくても大丈夫ですが、
家族へのメッセージは長々とは書けません。
なので、遺言書は、
自筆証書遺言でも公正証書遺言でも、財産のことを必要な範囲で書き、
その他のメッセージは遺書として書いた方が良いです。
遺書は、法的に決まっていない
遺書は、法的な効果がありませんが、
作り方に特に決まりがありません。
全部の文章を、自分で書いても良いし
パソコンで作成しても構いません。
録音して音声にしておく方法や
スマホで撮影して動画とする方法もあります。
何を伝えるのかも、自由です。
遺書では、感謝の言葉を書いても文句は書かない方が良い
遺書は、何でも自由ですが、
できれば感謝の言葉を残した方が良いと思います。
生前に受けた仕打ちに対して、
文句を書くのは、よくありません。
もしかしたら、せっかく書いた遺言書にまで、けちをつけられ、
相続のトラブルの原因になる可能性もあります。
死ぬ間際では、遺言書は作れないので気をつけましょう
最後になりますが、
死ぬ間際に、遺言を言い残すことはできても
法的に有効な遺言にはなりません。
法的なルールを守った遺言書にする必要があるのは
先に説明した通りです。
法的なルールを守った遺言書を作るのに、
2~3ヶ月はかかると思ってください。
そのため、死ぬ間際に、
法的に有効な遺言書を作ることは、
かなり難しいです。
そのため、遺言を残したいと少しでも思っている方は、
元気なうちに、そしてすぐにでも遺言書を作って下さい。